国民総幸福量(GNH)という国家指標を掲げ、伝統文化を保護しながらも独自の発展を目指す神秘の国ブータン。左の写真はそのブータンの旧首都があったプナカという街。中央に立つ建築物は「ゾン」と呼ばれます。各都市に建設される政治と宗教の中心地であり、時に城塞としても利用される、ブータン国の象徴的な建築物。プナカ・ゾンは水の色が違う二つの川が交わる中州に建造されています。
ネパールでの撮影を終え、ブータンへ向かったヒマラヤ撮影隊。ブータンは年間の外国人渡航客の数を制限していることもあり、まだまだ未知の文化を残す秘境として知られています。
ネパールと同じヒマラヤの隣国ですが、人ごみと喧噪の中 視線の激しく絡み合うカトマンズとは違い、街角の人も、僧院のお坊さんも、ガイドさんも運転手さんも、みんなとてもゆったりしているブータン。時間の流れが全然違うような気がします。観光地に人も少なく、撮影にもじっくり取り組めます。
ブータン滞在は3日間。撮影だけではなく行政機関やツーリズムとの商談など、様々なイベントを楽しみました。初日はプナカ・ゾンを撮影し、ファームステイ先の「ポプジカ」という山村へ移動。会う人会う人が笑顔で迎えてくれるし、みんな ゆったり・やさしく流れる時間を楽しんでいるように見えます。外国人は珍しいようですが、ジロジロ見たり急に声をかけたりはしない。一歩引いたもてなしとゆうか人との接し方が、日本人の感覚に近いような感じがします。
スペース・バズーカというマシンは、1回の動作で18枚の写真と周囲の形状情報を取得します。写真は1方角につき3枚、自動的に露光やシャッタースピードを調整して撮影した後、60°回転。それを6回繰り返すことで360°全方位の写真を撮影。さらに次の1回転で半径15メートル程の形状をレーザーセンサーで取得します。この動作を、簡単な設定で自動的にやってくれちゃう優れものなのです。だから通常の撮影時は撮影場所を決めて、カメラの基本設定を決めたら、ボタン「ぽちっ」とするだけ。しかしブータンという国の空気は不思議で、人の心にゆとりを与え、普段やらない手順を踏ませることがあります。この写真は、機材の設定や調子を、念入りに調整する弊社内田専務。すげー真剣な顔だ! ゆとりがあるからこそできる顔だ!
「ポプジカ」への移動で、日本でいうところの東名自動車道を走行中、岩盤落石事故があり立ち往生。東名道を塞ぐ巨大な岩石たちを、「ダイナマイトで吹き飛ばすから、ちょっと待ってて」ということでした。「東名道」にあたる道路に、「岩石」が落ちてきて、「ダイナマイト」で爆破、と聞いた時、失礼ながら。。「あぁ、遠くまで来たなぁ」という感じがしました。。。まぁでもこういう場合も、この国の人たちは、慌てたり、イライラしたり、怒ったりはあんまりしません。
東名道の爆破などもあり、目的地に付く頃には陽が暮れ始めていました。標高が高いせいか気温もぐんぐん下がってきたため、この日は撮影を諦め、とにかく急いでファームステイ先を目指すことに。延々と続く悪路と寒さに、昼間までの余裕はすっかり失せてしまったヒマラヤ撮影隊ご一行。。しかし今思うと、谷間の一本道に山々の稜線が折り重なり吸い込まれていくようなその景色に、少しずつ霧が立ちこめ陽が暮れてゆく刹那のこの瞬間を、なぜ撮影しなかったのか非常に悔やまれるっ!!というような美しい風景でした。
そんな風にしてブータン撮影の1日目が終了。ファームステイ先の温かくて美味しい食事(激辛)と地酒を頂き、身体もあったまったところで、一同寄り添うようにして就寝しました。氷点下8度。すきま風びゅんびゅん。
そういえば、撮影日前泊のブータンのリゾートホテルで、トイレに入ったら鍵が壊れて 中に閉じ込められたメンバーがいました。頑丈な扉なので鍵を壊して脱出することもできず、真夜中に約1時間、トイレに籠っていたそうです。写真はトイレの換気扇から、非常食の差し入れを要求する井村さん。思い返すと、ハプニング続きの撮影紀行だったな。