■はじめに:ICT Spring 出展経緯
カディンチェは、これまでシンガポールで開催されたアジアのスタートアップイベントに出展してきました。イベントでの記事が英語にて各種メディアに掲載され、ソーシャルメディアやメールを通してヨーロッパやアメリカのお客さん候補からコンタクトを受けるようになりました。そのような経緯や、Panoplazaが対象としているE-Commerceの潜在顧客が存在するであろうヨーロッパでのマーケティングをかねて、当社が出展できそうなイベントを捜索してました。そこで見つけたのがルクセンブルク経済通商省東京貿易投資事務所のウェブサイトに掲載のあった、欧州最大級ICTイノベーションフォーラムであるICT Spring 2012でした。
■ルクセンブルク概要
ルクセンブルクはフランス、ドイツ、ベルギーに囲まれた人口50万人の小国ですが、人口の4割が外国人であるという国際的環境で、EU機関が多く存在したり金融や鉄鋼が盛んで、国民一人当たりのGDPが世界最高レベルであったりします。最近では政府が積極的にICTインフラ投資や法規制整備を進めた結果、ヨーロッパのインターネットビジネス集積地に成長し、アマゾン、イーベイ、スカイプ、楽天等の企業も進出しているそうです。ICT Springはそんなルクセンブルクで3年前より毎年開催されています。日本企業の参加は今年の5社が最初だそうです。
■PwC’s Acceleratorによるイントロダクション
ICT Spring出展前日に日本、韓国、フランスからの参加者に向けて、PwC’s Acceleratorというルクセンブルクを拠点とするインキュベーション・コンサルティングファームによる当地のビジネス概況解説や企業見学ツアーが行われました。PwC’s AcceleratorはルクセンブルクにITベンチャーを誘致し、経営・会計・税務・法務・人事等のコンサルティングを提供することで、ITベンチャーのヨーロッパ進出を支援するとともに、アメリカ・シリコンバレーへの橋渡しもサポートしています。私としてはヨーロッパマーケットを検討しにルクセンブルクに訪れたものの、プレゼンテーション内でしきりにシリコンバレー(アメリカ)を強調されていたのが印象的で、ITベンチャーを育成するエコシステムとしてのシリコンバレーの影響力を強く感じました。
■Kabamオフィス見学
ルクセンブルクの企業見学として、アメリカ発のソーシャルゲーム開発会社であるKabamのオフィスを訪問しました。Kabamのルクセンブルクオフィスには約50人のスタッフが働いており、主にユーザエクスペリエンス評価、ローカリゼーション、マーケティング等を担当しているそうです。オフィス賃料や人件費は決して安くないものの、法人設立のしやすさ・税率の安さ・他言語国家・生活環境等が当地に支社を作る理由になったようです。オフィス環境もまるでカリフォルニアであるかのような広くて遊び心のあるオフィスでした。
■Lux Expoでのブース展示準備
夕方にLux Expoという今回のICT Springの会場に移動し、翌日からの本番に備えてブース展示の準備をしました。さすがにヨーロッパ最大級のICTイベントということで、会場も広く、各ブースも気合いの入ったものになっています。
■ICT Spring Europe 2012
ICT Spring は2012年6月19日・20日の二日間にルクセンブルクのLux Expoで開催された情報通信技術関連の展示会です。会場では3つの会議場でキーノート、ワークショップ、パネルディスカッションが同時並行的に行われるのとともに、約150のスタートアップがブース展示を行っています。弊社もこのブース展示に参加している1社です。来訪客としては、ルクセンブルクはもちろん、周辺のベルギー、フランス、デンマーク等から見学に来られていました。各社の展示テーマや講演テーマは、Social Media、Gaming、Digital Marketing、Big Data、Interactive TVなどで日本での類似展示会と似たような構成になっていました。
キーノートの一つでは楽天の三木谷社長が講演をされており、フランスのE-Commerce会社であるPrice Ministerの買収、カナダの電子書籍デバイスメーカーのKoboの買収、そしてアメリカの写真ベースSNSであるPinterestへの投資と楽天との連携等の話をされていました。
夜には会場に隣接したバンケットホールにてNetworking CacktailとEuropean ICT Awards Dinnerが行われて、最終的に会場を後にしたのは23:00になりました。ヨーロッパは夜が長いですね。
◆まとめ
ICT Springでは多くの方にブースを訪問して頂き、また関連企業の方とは連携の可能性を議論できました。これまでヨーロッパに接点のなかった弊社としては初めての経験であり、学ぶことの多い出展になりました。
また、欧州ビジネスの拠点としてのルクセンブルクについてはとても魅力を感じました。特に欧州各国にすでにリーチしている中・大企業には良い拠点です。一方で、今からヨーロッパに進出しようとしているB2Bのスタートアップにとっては不適当な拠点とも感じました。B2Bの会社としては、周辺に多くの企業が存在することが大事であり、そういう意味でルクセンブルクではICT以外の企業(弊社の場合は小売りとか不動産とか)があまり見当たらず、パリやロンドン等でしっかりビジネスを作ってから、その中心拠点としてルクセンブルクに欧州本社を設立という手順のほうが良いのではと思ったのです。B2Cのスタートアップであれば、直接お客さんとFace2Faceで会う必要はなくルクセンブルクが適当かと思いました。