こちらの記事はカディンチェ株式会社ホームページに記載されているICELAND 2013 参加レポートの転載になります。
2013年6月11日から16日にアイスランドはセールフォスで開かれたICELAND 2013: The International Panorama Photography Conference (国際パノラマ写真会議)にスピーカーとして参加してきた。パノラマ写真のアプリケーションとして一般的に思いつくのはGoogle Streetviewであろうが、それ以外にも不動産の物件案内や観光地案内にバーチャルツアーが使われていたり、カーレースの様子をパノラマ動画で見せたり等、近年ネット上での利活用は盛んになって来ている。今回は約30のパノラマ写真関連の講演に対して約150人の参加者が、会場であるHotel Selfossに集った。それら講演の中から特に目を引いた8講演について紹介する。
特に存在感を見せていたのがKolor社である。パノラマバーチャルツアーを作成するソフトウェアとして良く使われているのがKolor(フランス)のAutopanoやPanotourであるが、今回の会議でも製品の大きなアップデートを用意して来た。Autopanoではいよいよパノラマ動画用のオーサリング機能が充実し、Panotour Pro 2では静止画バーチャルツアーに対するリッチなコンテンツ付加等を可能にして来ている。また新発表であるKolor EyesシリーズではiOS端末でパノラマ動画を取り扱う為のソフトウェア開発環境を提供しており、いよいよパノラマ動画時代の到来を感じさせるものだった。
パノラマ動画の同期・スティッチに特化したスタンドアロンソフトウェアとしてはVideoStitch(フランス)がある。これは複数台のカメラを用いることで360度をカバーした動画撮影をし、それら複数の動画像を撮影後のポストプロダクションで同期・合成するソフトウェアである。アルゴリズムの洗練により正確かつ高速な処理が可能になっている。
パノラマ写真を自動で撮影するカメラとしてはGoogle Streetviewの撮影に使われているLadybugシリーズが有名ではあるが、高価なため一般的なパノラマ写真業者や個人がそれを利用することは難しい。そういった企業や個人に向けたパノラマカメラから2種類を紹介する。
1つ目はNCTech(イギリス)のiSTARである。これは装置内に4つのカメラとレンズが配置されており、撮影からパノラマ写真の合成までハードウェア内で行うカメラである。比較的画質が良いのに加えて、今回の発表では動画対応の準備も順調に進んでいることが紹介された。
2つ目はRoundshot(スイス)のVR Driveで、これはギガピクセル写真を撮る装置Gigapan (アメリカ)のような自動撮影カメラ雲台である。動作が高速なこと、設定が細かく調整できることが特徴だ。またLivecamもラインナップにあり、360度のストリーミング配信を実現していて、すでにスキー場や飛行場の監視用等に発売している。
この1年で急速に開発・普及されてきているのがパノラマ動画であり、その中でも複数のカメラをリグで固定して、後にソフトウェア処理で動画を合成する方式に使われるのがFreedom360Rig(アメリカ)と360Heros(アメリカ)である。ともにアクションカメラであるGoPro向けに設計された商品である。
全体の発表の4分の1を占めたのが各国のパノラマコンテンツクリエーターがそれぞれ特殊な環境で工夫して撮影したパノラマコンテンツの紹介である。空中、水中、世界で最も高いビルの屋上、ロケットの発射基地内、映画スターなどがそれらの対象である。
Airpano(ロシア)はパノラマ写真愛好家のグループであり、ほぼ毎月、世界の各地で空撮のパノラマ写真・パノラマ動画の撮影と公開を行っている。今回の発表ではアイスランド、インド、エベレスト等での撮影が紹介された。
Catlin Seaview Survey(オーストラリア)はそもそもは珊瑚礁の研究組織であるが、珊瑚礁の調査の一環で水中のパノラマ写真を撮影し、それがGoogle Oceanviewとして公開されたことで注目された。撮影には1眼レフカメラを複数台使用した撮影機材を使用して、重力がない水中だからこそ取り回しが出来る装置を使い高画質な写真を撮っている。
日本からは唯一の発表となった弊社の発表では、パノラマバーチャルツアーをウェブサービス上で作成しデータをホスティングするクラウドサービスとしてPanoplazaを紹介した。特にその利用者ターゲットをE-Commerceにフォーカスしていること、コンテンツクリエータとそのコンテンツを利用する企業クライエントがパノラマバーチャルツアーを共有できること、そして各種の実験的な機能が評価された。
写真や動画を360度に展開して利用するパノラマ写真・パノラマ動画はこれまでも各国のコンテンツクリエータにより作成されて来たが、近年はそれらクリエータを支援するハード・ソフト・サービスの充実が目覚ましく、パノラマ写真・パノラマ動画のさらなる普及が期待されている。ICELAND 2013はそれらの最先端企業・写真家・クリエータが集う会議であった。来年も同様の会議は予定されていて、ただいま開催地を検討中だそうです。弊社は、去年日本から参加していたパノラマクリエーター・ブロガーの二宮さんの紹介で参加することになったが、関心のある方は参加をお勧めします、とても面白かったです。