いつからか僕は、最先端技術と発展途上国に魅せられてきた。だから、これまでのキャリアの多くは研究者として暮らしてきたし、社会人になってからも暇をみつけてはモンゴルやネパールを訪問して、僕に何が出来るかを探ってきた。起業するにあたってもその最先端技術と発展途上国というのは当然のように重要なキーワードになっていた。単純に売上のことを考えると、最先端技術はともかくとして、発展途上国を相手にするのはまぁ割に合わない。特に創業時のベンチャー企業にとってはそんなことは儲かってから考えることで、まずは受託でも投資でもいいから資金をためて、儲かって来たら社会貢献・国際協力をしろというのがまともな論理だろう。
けど、僕は起業直前に、「史上最強の投資家バフェットの教訓」という本の一節に以下のような表記を見つけていたのである。「自分の望む仕事を始めるべき潮時が訪れたなら、逃がしてはならない。好きな仕事に就いていれば、あなたは毎朝うきうきとベッドから起き出せるようになる。履歴書の見栄えを良くするために、好きでもない仕事を続けるというのは、わたしに言わせれば愚の骨頂である。たとえるなら、老後に精力を残しておきたいからと、若いころに〇〇〇〇を我慢するようなものだ」これがずっと頭の中にある。やりたいことを無理に我慢することは無い。
というわけで、起業直後から社員のみんなも巻き込んで、これらについて取り組んでいる。
・全社員によるディンチェ勉強会2010春 in ネパール&ブータン
・上記ネパール・ブータン出張2010をベースに外部メディアで記事2本掲載
・2011年からはブータン政府観光局とコラボ中
前置きが長くなったが、そんな経緯・言い訳もあり、2012年11月3日から11月11日までネパールとブータンに渡航してきた。各国3泊4日の相変わらずの強行軍だったが、備忘録の意味も込めてブログに残したいと思う。
今回のネパール訪問では、IT企業を訪問してオフショアリングの可能性を探ったり、トレッキング会社を訪問して新会社設立を検討したり、また山村地域でワイヤレスインターネットプロジェクトを展開している友人と近況報告をしあってきた。さらにNPO法人パックス・アースの活動地であるカブレパランチョーク群(首都カトマンズから約65km)を訪問し、文房具の配布やこれまで当地での活動に対して協力をして下さっている協力者をお連れしての現地視察をして来た。最先端技術と発展途上国という意味では、このカブレパランチョークの山村で利活用可能な、マイクロ発電+インターネット+センサ+教育/医療/環境保全みたいなところで引き続き検討を続けたいと思う。カトマンズの発展は著しく、年々交通量が多くなってきている。相変わらずの政治の不安定さはあるものの、特に観光業は盛んになってきている印象だった(ここにビジネスチャンスがある)。またネパール産・ネパール発の商品も豊かになってきており、カシミヤ/パシュミナ、紅茶、木工細工などは今後の輸出商品としての可能性を感じた。写真はチベット仏教聖地の一つボダナート。
ブータン訪問では、ブータン政府観光局を訪問して日本語ウェブサイトの運営状況や今後の改善案等を話しあった。また、ブータン西部の主要な観光スポットでのパノラマ撮影を実施し(新規撮影はリンプン/パロゾン、ワンデュポダンゾン、チミラカン、ドチュラ峠の4箇所)、今後政府観光局ウェブサイトに掲載予定である。当地の観光産業は、水力発電産業に次ぐ有力産業でさらに拡大する方向にあり、国内のインフラ整備、旅行業界のキャパシティディベロップメント、マーケティング等に注力していくようである。当社としても日本国内でのデジタルマーケティングで貢献できればと思っている。以下は、パロゾンのバーチャルツアー。
また、首都のティンプー市内にはブータン初のデータセンター兼インキュベーション施設であるThimphu Tech Parkが開設され、今後IT産業を盛り上げて行く方針のようである。観光産業では引き続きデジタルマーケティングの需要はあるようだし、町中ではスマートフォンを持っている若者を多く見かけるようになり、それら新しいデジタルネイティブ世代向けの各種サービス開発も加速するのだろう。現地に「ありがとう株式会社」を作ってよなどという提案も受けた(カディンチェはブータン語で「ありがとう」の意味である)。写真は先日の火災で焼失してしまったワンデュポダンゾン。
僕らのようなテクノロジードリブンな会社にとっては、まずは何を作るかみたいなところから発想しがちだが、定期的にネパールやブータンのような現場に身を置くことで、現地のニーズをうまくすくいあげられたらと思っている。これらの国に役に立つデジタルマーケティングやサイバーフィジカルシステム(カメラやセンサを使用したシステム)を継続的に検討してみて、近いうちに現地での実証実験まで持って行ければと考えている。
soko aoki